もっと映画を観ないと

人生で必要なことは映画が教えてくれた

インビクタス 負けざる者たち

国家の分断を防いだ、負けられない戦い

 ラグビーのワールドカップ日本大会が終わった。日本が初のベスト8に進出し、日本中が快進撃に沸いた。今年の流行語大賞にも、関連する言葉が多数ノミネートされるなど、まだ暫くラグビー熱が冷める気配はない。

 そして今日紹介する作品は、ラグビーW杯を題材にしたヒューマンドラマ(実話)の『インビクタス 負けざる者たち』だ。 インビクタスとは、和訳すると「屈服しない」「征服されない」という意味で、ストーリーは南アフリカ共和国マンデラ大統領が釈放された日から始まる。

 時は1994年、人種隔離政策アパルトヘイトが廃止され、初の黒人大統領のネルソン・マンデラモーガン・フリーマン)が誕生した。南アフリカは元々ラグビーの強豪国であったが、アパルトヘイトにより国際社会から制裁を受け、第1~2回大会は不参加で、ようやく1995年の自国開催(第3回大会)で初出場を果たした。(ちなみに第3回大会は、日本がニュージーランドに17-145で歴史的大敗を喫した)

 ラグビーは白人のスポーツとされ、冒頭のシーンで道路を挟んで白人はラグビー、黒人がサッカーをしているシーンは印象的だ。ある日、代表チームのキャプテン、フランソワ・ピナール(マット・デイモン)が大統領に呼ばれ、二人でティータイムを嗜む。会談が終わり、車で待っていた妻がピナールに尋ねる。

 

 「あなたに何の用だったの?」

 「たぶん、ワールドカップ優勝だ」

 

 アパルトヘイトが廃止されたと言え、まだ国内には差別や経済格差があり、国家は分断寸前…マンデラ大統領はラグビーで国を一つにしようと考え、その思いをピナールと代表チームに託した。 

 決勝に進んだ南アフリカは、延長戦の末ニュージーランドを下し優勝を果たす。ただ描かれるのは、チームが結束するスポ根でもなく、マンデラとピナールの友情でもない。祖国のために信念を持ち国家再建に邁進する大統領と、その意を汲み取り、同じく国のために戦うアスリートの姿である。

 

「考えてたんだ、30年も狭い監獄に入れられ、それでも人を赦せる心を」

 

 決勝戦を前に、ピナールは妻にそう呟く。多くの黒人が白人に虐げられた現実は、痛いほどあらゆるシーンから読み取れる。実際に、私怨を捨て本当に国家のために献身的になれるのか…その問いに応えるのは容易ではない。

 決勝を前にピナールは家族に4枚の決勝戦チケットを渡す。父母と妻、そして黒人メイドの分だ。それぞれが言葉もなく、ただ笑みを浮かべるシーンは、目の前にあった見えない壁が、陽光で溶けて落ちていくようで素晴らしい。

 そして決勝戦、チケットなど買えるはずもない黒人少年が一人スタジアムの周りを歩く。そこには警備にあたっていた白人警察官が、パトカーのラジオでラグビーの中継にlくぎ付けになっていた。徐々に縮まっていく少年と警察官の距離、優勝を決めたあと、少年を肩車する警察官のシーンは、まさしく人種を超え、国家が一つになる一歩を踏む出した象徴的なシーンだ。

 優勝を決めたあと、マンデラ大統領は帰路につくが、道路は喜びに溢れた観客で車が前に進まない。道を変更しようとするSPに、マンデラは「このままで良い」と人種に関係なく歓喜する人々を見て微笑を浮かべる。

 ラグビーの精神は「One For All、All For One(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」で、そして日本代表のキャッチフレーズは「ONE TEAM」だ。ラグビーは、人々の心を一つにする不思議な力があることを改めて感じる一本だ。

 

◆作品名 インビクタス 負けざる者たち(2009年・米)134分

◆監 督 クリント・イーストウッド

◆出 演 モーガン・フリーマン

     マット・デイモン

     トニー・キゴロギ

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 最後に、マンデラ大統領の半生を描いた『マンデラの名もなき看守』は、マンデラの幽閉生活を看守の視点から描いた作品で、過酷な生活が痛いほど伝わり、合わせて観ると余計に感慨深い。